2012年6月12日火曜日

野田政権の1年その④

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年12月7日号(ゲラ刷り)

野田佳彦首相になって初めての国会が9日に会期末となる。最優先課題だった震災復興のための第3次補正予算はすでに成立している。復興庁設置法案も5日に民主、自民、公明の3党が修正合意し、今国会中の成立が確実となった。
にもかかわらず、毎日新聞が先週末に実施した世論調査で野田内閣の支持率は前回比4ポイント減の38パーセントになってしまった。
沖縄防衛局長のオフレコ発言に端を発した一川保夫防衛相の進退問題が世論調査の直前に浮上したことが下げ要因になったのは分かるが、別に大きな失点があったわけではない。本来ならば、誉めてあげても良いところだ。
もっとも不支持率が3ポイント減の34パーセントに止まり、残りの28パーセントが支持、不支持を明確にしていないのが、野田首相にとっては救いである。
おそらく国民は今、迷っているのだろう。
震災復興に道筋をつけた野田首相が次に見据える税と社会保障の一体改革だ。「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10パーセントまで引き上げる」とした大綱を年内にまとめ、年明け通常国会での成立に意欲を見せている。
毎日新聞の世論調査では、この消費税率の引き上げに賛成が45パーセント、反対が54パーセントだった。
それでも野田首相は国民の半分を敵に回し、消費税の引き上げに突き進むことができるのか。あるいは引き上げるにしてもその前提となる社会保障改革をまとめきれるものかどうか。まずは野田首相の政治力を国民は見極めようとしているのだろう。
さらに消費税率引き上げの是非について言えば、「税と社会保障の一体改革」の具体的な中身を見てからでなければ判断しようがない。
「高度成長期の日本の分厚い中間層を支えたのは社会保障制度だ。少子高齢化のもとでも持続可能な制度を確立させ、アジア太平洋地域全体のモデルとしたい」
 野田首相は4日、京都市で行われた国際労働機関(ILO)アジア太平洋地域会議でこう述べた。その意欲が空回りに終わらなければ良いのだが。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年1月13日号(ゲラ刷り)

 民主党の平野博文国対委員長は11日、自民、公明両党の国対委員長との会談で次期通常国会の24日召集に理解を求めた。これに対し自民、公明両党は先の臨時国会で問責決議を受けた一川保夫防衛相と山岡賢次消費者担当相の更迭を求めて譲らず、野田佳彦首相は13日の内閣改造でこれに応える意向を固めた。
 焦点となる改造人事については、小沢氏に近い問責大臣2人を入れ替えれば更迭色が鮮明となり、小沢グループの反発を招くため、併せてスネに傷ある平岡秀夫法相と蓮ホウ行政刷新担当相の交代も取り沙汰されている。
 入閣の顔ぶれについては衆院から小沢氏に近い海江田万里前経産相、原口一博元総務相や松本剛明元外相、馬淵澄夫元国交副大臣、三井辨雄元国交副大臣が有力候補になり得る。一川防衛相の更迭に伴う参院枠の人選については参院会長でもある輿石東幹事長に委ねられることになるが、小沢グループ内には適当な人材が見当たらない。このため、羽田グループから北沢俊美前防衛相の再登板か、あるいは羽田雄一郎国対委員長を起用する可能性もあろう。
さらに岡田克也前幹事長の入閣が有力視されているが、本人は「小説と想像の世界だ」と消極的な考えを示している。
 岡田氏については昨年9月の野田内閣発足時に官房長官就任を固辞しており、今回は税と社会保障の一体改革を担当する副総理としての起用が取り沙汰されている。適任者であることに異論はない。
ただ、菅政権の幹事長として自、公両党との話し合い路線を進め、さらに先の代表選で野田政権誕生を後押しした岡田氏は重要閣僚党要職を歴任し、いわば、民主党にとっては最後の切り札とも言える人材だ。幹事長として小沢切りの矢面に立つことがなければ、ポスト菅は岡田氏に決まっていたはず。野田首相がすがりつきたい気持ちは分からなくはないが、岡田カードは温存しておいた方がいい。
どうしてもと言うのであれば、幹事長代行をお願いしたらどうか。輿石幹事長とのコンビで与野党協議を委ねる方が政権運営は安定する。小沢氏に近い樽床伸二幹事長代行を閣僚に横滑りさせれば、万事丸く収まるのだが。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年1月18日号(ゲラ刷り)

「やりきることなくして日本と国民の将来はない。国会公務員給与削減を含む聖域なき行政改革、政治家自らが身を切る政治改革を実施した上で必ずやり抜く」
 野田佳彦首相は16日に行われた民主党大会でこう述べた。
ご存じ、税と社会保障の一体改革実現に向け不退転の決意表明だが、正直言って決意だけではどうにもならない。
 党内の消費税増税反対派はもちろんのこと、この日は来賓として挨拶した国民新党の亀井静香代表からも「暴風雨の中を環太平洋連携協定(TPP)や消費税の帆を揚げて、安全後悔することができると本当に思うか」と政策転換を促されては与野党協議どころの話ではなかろう。しかも、面倒なことはすべて岡田克也副総理に丸投げである。
 同じ日、岡田氏は副総理就任の挨拶のため自民党の大島理森副総裁を訪ねた際「政党間協議の話を副総理の立場でしているが、あなたが全部決めるのかとなるから、発言は慎重にした方がよい」と皮肉を言われている。
 そりゃそうだ。岡田氏に与野党協議を委ねるのであれば、やはり党の要職に器用するべきだった。政府の立場で与野党協議に口出しするのは筋が違う。これは議会制民主主義の手順の問題である。
 一口に与野党協議と言ってもまだ、政府・民主党は昨年末に一体改革の素案らしきものをまとめただけだ。野田首相は関連法案の国会提出を3月末までとしているが、分からないのはこの間の段取りである。
野党に協議を呼びかけているのは素案を叩き台とした大綱づくりなのか、法案そのものなのか。閣議決定の前か後でも話が違ってこよう。
民主党がその辺りの手順を踏みさえすれば、少なくとも消費税率引き上げを公約に掲げる自民党は門前払いできないはず。少なくとも岡田副総理が直接関与するとなれば、大綱にしろ、法案にしろ、閣議決定したものでなければ論外である。
 野田首相は党大会で与野党協議を求めながら一方で「野党に理解をいただけない場合は法案を参院に送り、野党にもう一度『この法案をつぶしたらどうなるか』と考えてもらう手法も採用する」とも述べている。まだ、国会開会前だというのに、こんな軽はずみな言葉を口にするようでは、お先真っ暗である。



●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年1月20日号(ゲラ刷り)

19日の与野党幹事長・書記長会談で民主党は税と社会保障の一体改革をめぐる与野党協議を正式に呼びかける。
 野党7党のうち社民党とたちあがれ日本は参加に前向きだが、自民、公明両党に加え、共産党、みんなの党も拒否する構えを崩していない。
共産党は引き上げを前提とした協議そのものに異を唱え、自民、公明両党は、関連法案の国会提出前の協議に応じない方針だ。
自民、公明両党は野田首相が党大会で恫喝まがいに解散をちらつかせて協議入りを促したことで態度を硬化させてしまったことが痛い。
解散発言は小沢グループの造反潰しだとの見方もある。聞くところによれば、政治評論家の集まりに招かれた際に知恵を付けられたようだが、それならば幹事長に言わせておけばいいものを。「不退転の決意」の空回りである。
前日の与野党国対委員長会談では民主党の城島光力国対委員長が一体改革の他、郵政改革、国会議員定数削減、国家公務員給与削減、子ども手当などについても野党との協議を呼びかけているが、いずれも重要な政治テーマである。先送りは許されない。
野党側は24日召集の通常国会の代表質問を政府4演説から1日おいた26日から行うよう求め、さらに第4次補正予算案の審議入り前に外交や環太平洋経済連携協定(TPP)などに関する集中審議の開催や交代した閣僚の所信聴取も求めている。
とりあえずは、すべて無条件に応じることだ。その上で事前協議は諦め、まずは政府与党で消費税率引き上げの前提条件となる議員定数、歳費の削減や公務員給与の削減案と併せて関連法案をつくり、国会論戦を通じて修正協議に入るしかないだろう。
自民党も民主党同様に一枚岩ではないし、協議入りを拒む自公の姿勢に世論は厳しい視線を向けているから、いつまでも背中を向けてはいられまい。
「自民党は向こう(民主党が)ダメだと嘲笑っているのではなく、力を貸してもいいんじゅないか。国家のために協力を惜しんではいけない」
とは自民党の石破茂前政調会長の発言だ。こういう真っ当な考えの政治家が党を引っ張るようになれば、自民党の政権復帰も夢ではないのだが。残念である。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年1月27日号(ゲラ刷り)

「一票の格差」の是正を目的にした衆院選挙制度改革に関する与野党協議会が25日、約2ヶ月ぶりに開かれた。席上、座長を務める民主党の樽床伸二幹事長代行が小選挙区「0増5減」と比例区「80減」を提案。自民党の細田博之もと幹事長は「0増5減」には賛成したが、比例区「80減」については「議会制民主主義に反する」として反対し、他の野党もこれに同調した。また抜本改革を求める公明党は東順治衆院議員が小選挙区比例代表連用制の導入を主張した。
 ここまでは想定内のやりとりだが、とりあえず政府の「衆院選挙区画定審議会」が首相に区割り案を勧告することになっている2月25日までに格差是正と議員定数削減、選挙制度の抜本改革の3点についてなんらかの結論を出すことにはなったようだ。 
 これを受けて当初、関連法案の単独提出も辞さない構えだった民主党が比例削減数や連用制導入などで柔軟な姿勢を見せ始めている。抜本改革への道のりは険しいが、一歩前進である。
 税と社会保障の一体改革でもこれくらいの柔軟さが政府与党に求められよう。
 野田佳彦首相は24日の施政方針演説で自民党政権時代の福田康夫、麻生太郎両元首相の施政方針演説を引用して「今こそ政局ではなく、大局を見据えよう」と野党に協力を呼びかけた。
当時、福田氏が「与野党が信頼関係の上に立って話し合い、国政を動かすことこそが、国民に対する政治の責任だ」と述べ、麻生氏が「消費税を含む税制抜本改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と述べたことを逆手にとり、税と社会保障の一体改革を進める自らの立場を正当化したものだ。
 だが待てよ。当時、民主党は福田氏や麻生氏の呼びかけにまったく耳を貸さずに解散を叫んでいたではないか。立場が変わり、今度は自民党に協力を求めるのであれば、まずは当時の民主党の振る舞いを率直に詫びることだ。
「あのころを思い出すと、話し合いは全て拒否された。(協議の成否は)与党がどう対応するかにかかっている」
演説を引用された福田氏はこんな感想を漏らしている。野田首相には是非とも大局を見据えていただきたいものだ。
 








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