2012年6月14日木曜日

野田政権の1年その⑦

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年4月18日号(ゲラ刷り)


与野党の国対委員長は16日、消費税率の引き上げを柱とする税と社会保障の一体改革関連法案を議論するため、衆院に特別委員会を設置することで大筋合意した。民主党の城島光力国対委員長は20日の設置を目指している。
当初は5月連休明けの審議入りもささやかれていたが、議論の先送りは許されない。
先の党首討論で野田佳彦首相に対して早期の審議入りを促した自民党の谷垣禎一総裁の姿勢を評価したい。
ただ、法案への賛否について谷垣総裁は16日の講演で「けじめをどうつけるのかという問題と、社会保障と税の一体改革に不備がある点を整理されなければ、なかなか賛成の余地はない」と述べている。
また、この前日には同党の茂木敏充政調会長が「社会保障に対する自民党の考え方を受け入れ、もう一回国民に信を問う覚悟がなければ、とても通すことはできない」と述べ、法案賛成の条件として民主党がマニフェストに掲げる最低保障年金や年金一元化の撤回と衆院解散の確約を求めた。つまり、野田首相に無条件降伏を迫ったのである。
消費税率を引き上げ、財政再建の道筋を示すことに野田首相が政治生命を賭けているのであれば、迷うことはない。決断を先送りすれば、政権運営は今以上に難しくなる。
自民党は早ければ今週中にも、失言迷走する田中直紀防衛相と併せ、岐阜県下呂市長選で特定候補を支援するため署名入り文書を地元建設業協会に送付した前田武志国交相の問責決議案を参院に提出する構えだ。可決となれば、当然ながら国会審議は混乱する。もう一人、再稼働問題で右往左往する枝野幸男経済産業相も野党の集中砲火を浴びるだろう。そうなれば、消費税増税法案の成立どころの話ではなくなる。
折しも時事通信の直近の世論調査で消費税増税法案成立と引き替えにした「話し合い解散」について35%が賛成している。また、衆院解散の時期については29・7%が「できるだけ早く」と答えている。やるなら6月21日の会期末と言わず、早ければ早いほどよい。野田首相の勇断を期待する。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年4月25日号(ゲラ刷り)

「真剣に謙虚に受け止め、反省しなければいけない。だからといって、辞めなければいけないかというと別の問題だ」
 野田佳彦首相は23日、テレビ番組の収録でこう語り、野党が求める田中直紀防衛相と前田武志国交相の問責2大臣の辞任を重ねて否定、併せて内閣改造にも消極的な姿勢を見せた。
 さらに同日には民主党の城島光力国対委員長が自民党の岸田文雄国対委員長との会談で消費税関連法案など税と社会保障の一体改革関連法案を審議する衆院特別委員会の設置を24日の本会議で議決する方針を伝えた。
 これに先立ち、自民党の大島理森副総裁は22日の講演で審議協力への条件として問責2大臣の交代の他、全部で11本もある特別委員会の審議法案の整理と衆院選マニフェストのけじめを求め、「野田佳彦首相が本当に政治生命を賭けるなら、これらを自ら先頭に立ってやるべきだ。2閣僚の整理先頭もせずにそう(審議入り)するなら、勝手にやれと言わざるを得ない。巡り巡って審議を遅らせることになる」と述べていたが、野田首相の強気の姿勢を覆すには至らなかった。
 野田首相の立場からすれば、問責2閣僚の辞任は即、国会で任命権者の責任が追及されることになる。あるいは、内閣改造したくても代わる人材が党内にいない。それにこの2人を参院枠で閣内に送り込んだ参院のドン、輿石東幹事長が交代に強硬に反対している。つまり本当のところ、たとえ野田首相が内閣改造を望んでいたとしても、したくともできないのである。
 とはいえ野田首相と自民党の睨み合いがこのまま会期末までずっと続くわけではない。今国会会期中の消費税増税法案成立と早期の解散総選挙は野田首相と自民党の谷垣禎一総裁が目指す共通のゴールである。
今はこれに不満、反発する民主、自民両党内のガス抜きの最中、国会は5月連休明け、何事もなかったかのように正常化のレールの上を走り出していることだろう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年5月9日号(ゲラ刷り)

 連休明け国会は8日、衆院本会議で税と社会保障の一体改革関連法案が審議入りした。10本あった関連法案は結局、7本に絞り込まれ、8日は被用者年金一元化法案と受給資格期間短縮などを盛り込んだ国民年金法改正案の主旨説明と質疑を行い、10日に子ども・子育て支援関連3法案、11日に消費税増税関連2法案が順次審議入りする。
「私どもは談合はしない。ガチンコ勝負をしないといけない。この路線を今国会では徹底的にやり抜きたい。(今国会会期末の)6月21日までに必ず大きなヤマ場がくる。全力をあげて与党を追いつめ、政権復帰できるように先頭に立って頑張る」
自民党の谷垣禎一総裁は前日の講演でこう述べた。待ち望んだ解散総選挙への確かな手応えを感じてのことか。
 谷垣氏はまた、民主党が掲げる最低保障年金制度の導入について「極めて社会主義的制度だ。そんなことをしたら、ものすごいモラルハザードが起きる」と批判し、対案提出の構えを見せている。来る総選挙での争点化を意識したものだが、あるいはこれを野田首相が丸飲みすれば、政界は解散総選挙を待たずに民自大連立、政界再編へと動き出すことになるかもしれない。
 もっとも、当面は参院で問責決議を受けた前田武志国交相と田中直紀防衛相の進退問題が与野党攻防の焦点だ。
2大臣の続投姿勢を崩さない野田首相に対して「一国の総責任者として、首相がそういう判断をまじめにするとは思わない」(谷垣氏)と批判する自民、公明両党は、首相の問責決議をちらつかせて更迭を迫っている。
週明け16日からは税と社会保障の一体改革特別委員会が始まるが、それまでに野田首相が決断しなければ、審議日程への影響は必至だ。
もう一つ、晴れて無罪となった民主党の小沢一郎元代表の国会招致問題もある。党員資格停止処分が解除されたからといって、国会での説明責任から免れるものではない。いずれも大事の前の小事である。さっさとトゲを抜いて政治を前に進めることだ。






 

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