2012年6月12日火曜日

野田政権の1年その③

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年9月30日号(ゲラ刷り)

 民主党の平野博文国対委員長は28日、自民党の逢沢一郎、公明党の漆原良夫両国会委員長と個別に会談し、先に第三次補正予算案と震災復興の財源捻出のための臨時増税案を示し、与野党協議の早期開催を申し入れた。併せて平野氏は野党が求める今国会の再延長はせず、予定通り30日に閉会する方針を伝えた。
 これに対して逢沢氏は「政府・与党案を閣議決定し、国民に明らかにするのが先だ」として回答を留保した。
 もっとも、与野党協議が先か、閣議決定が先かは国会戦術上の駆け引きでしかない。問題は中身とスピード感だ。
 27日に政府・民主党が決めた第3次補正予算案は総額12兆円規模に膨れあがった。主な内訳は、被災地のインフラ復旧や雇用創出などの復興対策事業費6・1兆円、地方交付税の加算1・6兆円、災害関連融資関係費0・6兆円、学校耐震化など全国の防災対策費0・5兆円、除染費用0・2兆円、1次補正で取り崩した公的年金財源の補填2・5兆円など。原案になかった福島第一原発事故の除染費用や被災地の企業対策事業などを党政調が積み増したため、約1兆円の増額となった。本欄で度々指摘してきたことだが、大判振る舞いの感は否めない。
 しかも、財源となる復興増税の規模について27日に党税制調査会が11・2兆円に決めたものの直後に前原誠司政調会長が日本たばこ産業(JT)の全株売却などで増税規模を9・2兆円に圧縮すると表明、これをさらに28日になって党税調が元に戻すという失態もあり、まるで震災復興で数字遊びをしているようで、大丈夫かと言いたくなる。
 同日の参院予算員会で野田佳彦首相は「与野党がある程度事前に合意し、提出後に速やかに成立を期す。(民主、自民、公明の)3党合意を踏まえて中味の点検が早く進む方がいい」と述べたが、質問に立った参院自民党の世耕弘成幹事長代理は「事前協議は必要ない。国会審議の形骸化につながる」と突っぱねた。
 被災地住民にとってはスピードが大切だが、一方で臨時増税については広く国民の理解を得なければ先には進めない。そうであれば多少スピードを落とすことになったとしても、ここはやはり自民党の求めに応じ、会期延長した上で堂々と国会論戦に臨んだ方がいい。急がば回れだ。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年10月14日号(ゲラ刷り)

「安全運転でやってきたが、社会保障と税の一体改革やTPPなど、いろいろな難局を乗り切る必要がある。11月がヤマ場です」
 野田佳彦首相は11日、連合の古賀伸明会長との会談でこう述べ、協力を要請した。
 どちらも歴代政権が先送りしてきた大テーマである。
 TPP、すなわち還太平洋パートナーシップ協定については、9月の日米首脳会談でオバマ大統領から早期の交渉参加を要請され、「しっかり議論し、できるだけ早期に結論を得たい」と応じている。
 野田首相としては11月中旬に予定されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)までに何らかの結論を得たい考えだ。
 同日には関係閣僚を集め、初会合を開いたが農業分野の関税引き下げについては政府、民主党内がまずまとまるかどうか。すでに党所属議員の186人が反対の立場を鮮明にしている。
自ら期限を切った野田首相がここで躓けば、政権の求心力低下は免れない。
自民党は「必要な条件が整ったらやればいい。タイムリミットが決まっているから間に合わせるというのでは国益を損する」(茂木敏充政調会長)と様子見を決め込んでいる。
 社会保障と税の一体改革についても、安住淳財務相が12日の経団連との懇談で「消費税(の税率引き上げ)を正直に国民にお願いするしか道はない。来年には必ず消費税の法案を(国会に)出す。直間比率の見直しを含めて、それぞれの税制について抜本改革を行う」と述べている。そうであれば、第三次補正予算案の財源問題や来年度予算案の編成にともなう税制改正と併せ、早期に叩き台を示して自民、公明両党を協議のテーブルに付けたいところだ。
 しかしこれも、自民党の石原伸晃幹事長は入り口となる第3次補正予算案を「速やかに通す」としながらも、財源確保のための臨時増税については「全く考えが違う。現役世代だけで負担するのが正しいのか」と批判し、次期臨時国会で修正を求めていく考えを示しているため、抜本改革にたどり着くまでの道のりは遠い。野田首相の力量が問われよう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2011年10月19日号(ゲラ刷り)

 野田佳彦首相は17日、内閣記者会のインタビューで衆院の選挙制度見直しについて、「まずは一票の格差」を早急に是正することは与野党で共有できる」と述べ、20日召集予定の次期臨時国会で現行の一人別枠方式の廃止を前提にした選挙区画定審議会設置法改正案の成立に意欲を示した。それはいいが、野田首相自身は現行制度の抜本改革をやるつもりなのかどうか。
 野田首相は同じインタビューで原発の新増設についても「進捗状況が違うので、案件毎に個々に判断していく」と述べるに止めている。
さらに待ったなしのTPP(環太平洋連携協定)参加には「特定の結論ありきではなく、幅広に議論していきたい。なるべく早い時期に結論を出したい」、米軍普天間基地の移設に関しても「いつまでと確定はできないが、結論はなるべき早い段階に得たい」と口をついて出てくるのは万事が意欲や願望だけだ。
きっと国民はそんな首相に物足りなさを感じていることだろう。
先週、時事通信社の世論調査で内閣支持率は前月比7・9ポイント減の42・2パーセントだったのに対し不支持が9・5ポイント増の26・8パーセントに跳ね上がってしまった。
同社は「調査直前の小沢一郎民主党元代表の初公判や安全運転に徹して発言を控える野田佳彦首相の姿勢が支持率に影響を与えたと見られる」と分析する。
確かにそうかもしれないが、ものは考えようだ。いくら首相があれをしたいこれがしたいと言ってはみても、党内、与野党のコンセンサスを得なければ、何一つ、政策は実現できない。ねじれ国会の限界を国民はこれまで幾度となく見てきたはず。野田首相に小泉純一郎元首相のような強烈な個性やリーダーシップを求めるのは酷な話だ。
 日本の将来を考えれば、消費税の引き上げや米軍普天間基地の辺野古先への移設、そしてTPPへの参加も結論はすでに決まっている。
 それこそ野田首相には地味でもいいから、次期臨時国会で確実に成果をあげてもらいたい。評価は後からついてこよう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」 2011年11月18日号(ゲラ刷り)


野田佳彦首相は16日の参院予算員会で、環太平洋連携協定(TPP)参加の是非を争点にした衆院解散の可能性を否定した。
 公明党の山本香苗議員が「TPPは国論を二分する大問題になっている。国民の信を問う覚悟はあるのか」と質したのに対し、野田首相は「国難というべきいろんな課題を抱えている時に、民師を踏まえた十分な議論をしながら与党、与野党の合意形成をしていくことが、まずは大事だ」と応えた。
 そりゃそうだ。参加の協議に入るかどうかでいちいち解散していたら、政治が停滞する
ではないか。
 知的中産階級を代表する公明党からこんな愚問が飛び出すとは意外だが、気持ちは解る。
 この前日、与野党9党による「衆院選挙制度に関する各党協議会」が開かれた。
席上、座長を務める民主党の樽床伸二幹事長代行が、今国会に提出する衆議院選挙区確定審議会設置法改正案で早期是正が求められている「一票の格差」を先行して処理することを提案した。
これに対し民主、自民の二大政党が有利となる現行制度の抜本的見直しを求める第三極政党が反発して物別れとなった。
とりわけ前回衆院選の選挙区で壊滅的打撃を受けた公明党は「小手先の格差是正を基本にし、抜本改革を先送りすれば国民世論に逆行すると謂わざるを得ない」(山口那津男代表)と民主党の姿勢を痛烈に批判、19日の党全国県代表協議会で現行制度を前提にした次期衆院選小選挙区候補9人の公認を正式決定する予定だ。
 そうなれば次期衆院選は民主VS自民・公明の構図が決まってしまう。もはや、公明党が民主党政権に協力、連携する可能性は限りなくゼロに近い。年明け通常国会は大荒れ必至だ。
 野田首相は年末までに消費税率引き上げを盛り込んだ税と社会保障の一体改革の叩き台を示す予定だ。
 先に行われたホノルルの記者会見では「消費税は社会保障の安定財源に位置づけられており、どの内閣でも避けて通れない。法案準備を政府・与党で議論し、野党にも協議を呼びかけながら、全力を尽くして成立を目指す」と述べているが、公明党を敵に回してどうやって参議院の過半数を得るのか見ものである。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」 2011年11月23日号(ゲラ刷り)

 震災復興を柱とする第3次補正予算が21日、参院本会議で可決成立した。総額12兆1025億円は補正予算としては過去2番目の規模である。
 このうち復興関連予算9兆2438億円の内訳は、がれき処理に3860億円、道路や河川、港湾復旧に1兆4734億円、被災した中小企業、農林漁業の経営支援に6716億円、原発事故による放射能汚染の除染費用に3558億円等々。
どさくさ紛れの大判振る舞いはいずれ国民にツケが回ってくることになるから、その時になって文句を言ってもはじまらない。覚悟しておいた方がいいだろう。
 そして、その後はいよいよ消費税の引き上げである。
 これについて野田佳彦首相は参院本会議の採決に先立ち行われた予算委員会の締め括り質疑で「実施の前に国民の信を問う」と述べ、次期衆院選を年明け通常国会に提出を予定している消費増税準備法案の成立後とする考えを示した。
 しかし、そんな悠長なことを言っている場合ではなかろう。
 先日には自民党の大島理森副総裁が地方講演で「民主党の中の政局はこれから消費税だ。彼らは、消費税を上げるという言葉を前回衆院選の時に一言も言っていない。民主党ではできないから、野党と協議してやりましょうというなら解散総選挙をすればいい」と述べている。
次期通常国会の会期末となる来年6月までに野田政権を解散総選挙に追い込むことは自民党の既定方針だが、法案成立のカギをにぎる公明党がこれに歩調を合わるように、19日に行われた党全国県代表協議会では山口那津男代表が次のように述べている。
「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加や消費税増税でブレーキとアクセルを踏み間違えている。こんな車に国民が安心して乗れるワケがない。衆院の任期は半ばを過ぎ、常在戦場の構えで臨まねばならない。私も先頭に立って戦う」
 消費税の引き上げについては、国民新党の亀井静香代表も反対を表明しており、そうであれば法案成立を待たずに、野田首相が解散総選挙に追い込まれてしまうことにもなりかねない。それとも、民主党はまたまた首相のクビをすげ替えるつもりか。









 

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