2012年6月14日木曜日

野田政権の1年その⑥

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月9日号(ゲラ刷り)

 来年度予算案が8日、衆院を通過する。歳入の裏付けとなる赤字国債を発行するための特例公債法案の採決は先送りされたが、11年度で期限切れとなる租税特別措置の延長や自動車重量税の軽減、地球温暖化対策税の創設などが盛り込まれた税制改正法案や東日本大震災復興特別会計を設置するための特別会計改正法案などについては国民生活の混乱回避のため自民、公明両党が賛成にまわり、月内にも成立する見通しとなった。民自接近の成果といっていいだろう。
 成果はまだある。5日には与野党の環境相経験者が集まり、東日本大震災で発生したがれき処理について話し合った。
 会合を呼びかけた自民党の小池百合子氏は「国難にはそれぞれが役割を担うべきだ」と語っている。出席者は小沢鋭仁氏や公明党の斎藤鉄夫氏ら5人。「お互いさま」をキーワードに今後、副大臣や政務官経験者にも参加を呼びかけ、「与野党が力を合わせてそれぞれの地域で努力する」(小沢氏)という。それこそが国民が待ち望んできたことだ。
 それなのに民主党内はいまだに小沢グループが国政の足を引っ張ろうとしているのだから情けない。
 野田佳彦首相は週明け13日にも消費税増税関連法案を閣議決定する。これを邪魔しようと小沢氏側近の樋高剛総括副幹事長は6日、小沢グループの会合で「来所右派何が起こるかわからない。12日から東京にいてほしい」と禁足令を出した。
 もう一人の側近、東祥三前内閣府副大臣は「増税法案の答弁を求められた時、副大臣や政務官はどうするのか」と述べ、小沢グループの政務三役の総引き揚げをチラつかせている。いったい何のためにこの人たちは政治家になったのか。
 親分の小沢氏はこの日夜の会合で、野田首相が消費税増税に向けた決意を「51体49でも決めたらみんなで頑張る」と答弁したことを引き合いに出し、「それが民主主義なのか。本当にそれでいいのか」と批判を浴びせている。
 これまで数の論理をさんざんに振り回しておきながらよく言えたものだ。小沢流の民主主義にも困ったものである。

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月16日号(ゲラ刷り)

野田佳彦首相が月内の国会提出を目指す消費増税関連法案の骨子が明らかになった。税率を14年4月に8パーセント、15年10月に10パーセントに、二段階で引き上げるという。
だが、消費税引き上げに反対する連立相手の国民新党の亀井静香代表は13日、野田首相との会談で「今、消費税を引き上げるべきではない。国民新党としてはサインできない」と述べ、法案提出の前提となる閣議決定の際、同党の自見正三郎金融・郵政改革担当相の閣僚署名を拒否する姿勢を見せている。また、民主党では法案提出の党内手続きが14日から始まっている。引き上げ阻止を政局に絡める小沢一郎元代表の出方次第では波乱含みの展開となりそうだ。
もっとも、法案の扱いについてはすでに政府・民主党三役会議で月内提出を決めている。それでも小沢氏らが邪魔するつもりなら、離党を覚悟してのことだろうから大歓迎である。
野田首相は13日の参院予算委員会で「一体改革が成立した暁には、やるべきことをやり抜いた上で解散については適切な時期に判断したい」と述べている。そのためには、党分裂も覚悟の上だ。
小泉純一郎元首相ではないが、最高権力者が開き直れば向かうところ敵なし。怖いものは何もない。
このところ、民主党内では分裂回避を優先する法案提出先送り論が囁かれているようだが、それこそ党利党略、私利私欲、国民不在の議論である。
重要なことは消費増税の是非ではなく、財政再建の道筋を示すことができるかどうかだ。併せて、経済成長戦略の練り直しが迫られている。
年明けからかなりの人数の国会議員と接触してきたが、これは与野党の心ある政治家の共通の認識だ。
来週月曜発売の週刊ポストに麻生太郎、安倍晋三両元首相の対談が掲載される。司会進行役を務めたが、お二人とも民主党政権の失政を厳しく指摘しつつも、条件付きながら消費増税には前向きである。法案成立に協力を求める野田首相には頼もしい援軍となろう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年3月28日号(ゲラ刷り)


国会は今週も引き続き、参院予算員会を舞台に野党自民党が野田内閣を袋叩きにしている。参院自民党の存在感を見せつけたいのだろう。言うまでもないが、田中直紀防衛相が最大のターゲットである。ボコボコにしたらいい。さっさと問責決議案を提出してクビにすることだ。ただし、参院自民党の役目はそこまで。事後はいよいよ谷垣禎一総裁の出番である。
「首相の選択肢は二つだ。党内融和を重視し、小沢さんにひれ伏すのか。大きな意味で野党との協力を求め、解散して党内を整理するのか」
 自民党の谷垣禎一総裁は25日の講演でこう述べ、消費税増税関連法案の党内調整にもたつく野田佳彦首相に小沢切りを促した。
 谷垣氏は講演後の記者会見で「野田首相が(消費税率引き上げに)非常に強い決意を持っていることは信じようと思っている」とも述べている。
 野党第一党の党首が、ここまで踏み込んだ発言をするからには、野田首相にも誠意のある対応を求めたい。
 小沢切りを決断する一つのタイミングは消費税増税関連法案の閣議決定を予定している3月30日だ。
 野田首相は26日の参院予算員会で「党代表選で最優先の公約に掲げた。不退転の決意で実現しようという思いを共有してもらいながら、引き続きみんなで一緒に法案を提出し、成立に向けて努力していきたい」と述べていた。
 気持ちは分かるが、増税反対派はこれまで散々、政権の足を引っ張ってきたいつもの連中である。党内をまとめるのは至難の業だ。しかも、増税反対派を裏で操る小沢一郎元代表は24日のテレビ番組で「とても採決するような状況にはならない」とまで言い切っている。これでは仮に閣議決定にたどり着けたとしても法案成立どころか、衆院通過さえ危ぶまれよう。


●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年4月4日号(ゲラ刷り)


消費増税法案の成立が先か、それとも解散総選挙が先か。4月以降、政局の焦点はつまるところこの一点に尽きよう。どちらが先になるにしても民主、自民双方に「話し合い解散」の機運が高まってきていることだけは確かだ。
自民党の谷垣禎一総裁は2日に行った講演で「果敢に突っ込んでいく前から『話し合い解散だ』ということはない。(与野党が)ぶつかり合ったあげく、われわれが言う(法案成立前の)解散に代わるリーズナブルなけじめ論が出てくれば、全く排除するとは言っていない」と述べ、消費増税法案成立後の解散総選挙を容認する姿勢を見せている。
 ここ数日の自民、公明両党幹部の発言を拾ってみれば、まずは自民党の石原伸晃幹事長は野田首相が解散時期を示した上で「(民主党が)最低保障年金と年金一元化を棚上げして自民党と歩調を合わせれば、議論は非常にかみ合ったものになってくる」と言い、同党の茂木敏充政調会長は「(増税に反対する)民主党の小沢一郎元代表や国民新党の亀井静香代表を説得し、納得してもらえないなら、そういう人たちには出て行ってもらう。これぐらいの気概がないと与野党間で真剣な議論ができない」と小沢、亀井切りを求めている。
 もう一人、公明党の漆原良夫国対委員長は「大きな法案の審議は特別委員会を設置して毎日するのが正しいやり方だ」として衆院で100時間の審議時間を求めている。いちいちもっともな話だ。
 野田首相がこれを一つ一つクリアしていけば、消費増税法案の成立が見えてくる。このうち小沢、亀井切りについてはもはや秒読みの段階。消費増税法案に反対する小沢グループは党役職に就く29人が党執行部に辞表を提出している。これは事実上の倒閣運動、野田首相に不信任を突きつけたのも同然である。もちろん、除名、離党覚悟のことだろう。
 2日、同グループでただ一人離党届けを提出した木内孝胤衆議は記者団に囲まれ「自分の信念を貫くには離党が最良だ」と述べていた。
政権与党の一員としての責任を放棄してでも守るべき信念とやらがあるのであれば致し方ない。いずれ小沢氏ら造反予備軍も後に続くことになろう。

●東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年4月13日号(ゲラ刷り)

 今国会2度目となる党首討論が11日に行われた。野田佳彦首相は消費税増税関連法案の会期内成立に向け「政治生命を賭けると言ってきた。重大な決意を持って臨んでいくことに変わりがない」といつも通りの覚悟を示し、「閣議決定を行い、国会に関連法案を提出し、予算も成立した。重要課題についてトップ同士で胸襟を開き、問題意識を共有する党首会談を引き続きお願いした」と述べた。
 これに対して自民党の谷垣禎一総裁は「まずは国会でがっぷり四つに組んで議論していくのが大事で党首会談は論点が煮詰まってからだ」と主張。野田首相は「閣議決定を行い、国会に関連法案を提出し、予算も成立した。土俵に上がったのに、なぜ、待ったを言うのか」と声を張り上げ逆ギレしたものの、谷垣総裁に「国会の場での具体的な日程、やり方を示さないのに、待ったを言うのは無礼千万。野田首相にのしをつけてお返しする」と反論されて万事休す。野田首相が消費税増税法案の成立に自民、公明両党の協力を求める以上、結局は谷垣総裁の求めに応じて国会で議論を深めていくしかなかろう。
 さっそく野田首相は党首討論後、首相官邸で政府・民主党三役会議を開き、消費税関連法案の扱いについて協議、今月中に衆院特別委員会の設置を野党に提案することを決めた。一歩前進である。
 ただ今国会、消費税増税法案が成立すれば、他はどうでもいいと言うことにはならない。
 田中直紀防衛相にいつまでもこの国の安全保障を委ねていては心配だ。あるいは原油価格が高騰する中、原発再稼働問題の対応が混乱する枝野幸男経済産業相の下ではエネルギーの安定供給に不安がある。
 さらにここにきて、前田武志国交相が今月15日投開票の岐阜県下呂市長選挙で特定立候補予定者の支援を依頼した文書を地元建設業協会幹部宛に送っていたことが発覚。前田国交相は11日の衆院国土交通委員会で「文書の内容や送付先は全く知らないが、不注意だった」と述べ、事実関係を認めている。
 大臣が告示前に特定の人物への支援を呼びかける行為は公職選挙法に抵触する可能性がある。野党の徹底追及を期待したい。

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