2013年3月23日土曜日

「戦後レジューム」からの脱却を目指す安倍首相はお爺ちゃんの岸信介元首相を裁けるのか

「今、国会中で毎日いじめられて大変なんですよ。しかし、前よりだいぶ免疫ができて免疫力を発揮しています。幸い5年前に画期的な新薬が認可されたが、日本は認可が30年くらい遅かった。遅かったがために2回首相ができたのではないか」
 安倍晋三首相は19日、医薬品メーカーなどが開いた会合に出席してこう述べ、会場の笑いを誘ったそうだ。
 その首相再登板も滑り出し順調だから、軽口を叩く余裕が出てきたのだろう。だが、政権を投げ出すほどに悪化した持病の潰瘍性大腸炎は完治したわけではなく、薬頼みの身の上であることに変わりはない。国会審議中に度々トイレに駆け込む安倍首相の後ろ姿に政権の先行きを不安視する声は依然として永田町に根強い。一方で本人が健康をアピールすればするほど、日本の将来を危惧する声を増幅させることにもなろう。
何より不安なのは安倍首相が目指す「戦後レジューム」から日本が脱却した後の姿が見えないことだ。
安倍首相はサンフランシスコ講和条約が発効した昭和27年4月28日を「主権回復の日」として政府主催で式典開催を準備している。今さら言うまでもないことだが、同条約の発効はそれこそ日本が西側の一員として「戦後レジューム」に組み込まれたことを意味する。逆上れば、日本は昭和20年8月にポツダム宣言を受諾。GHQの占領下、極東国際軍事裁判と現行憲法の制定プロセスを経ること、つまり「戦後レジューム」を無条件に受け入れることで主権の回復を成し得たのではなかったか。日米同盟はその「戦後レジューム」の帰結であり、反面ではいまだに日本が米国の強い影響下にあることの象徴でもある。
それにもかかわらず安倍首相はその米国が主導した極東国際軍事裁判どころか現行憲法すら否定しつつ、一方で日米同盟の強化、とりわけ日本の軍事的プレゼンスを高めることだけに前のめりになる矛盾をどう理解したらいいのか。
お爺ちゃん(岸信介元首相)を戦犯容疑で裁こうとした極東国際軍事裁判が気にいらないのか。あるいは戦前日本軍が痛めつけた中国人が報復してきそうで怖いからか。いずれにせよポツダム宣言もサンフランシスコ講和条約も日米二国間で取り交わしたものではない。はたして国際社会がそんな日本だけに都合のいい、いいとこ取りの「戦後レジューム」からの脱却を受け入れてくれるだろうか。
それでも「戦後レジューム」から脱却したいというのなら、まずは終戦のどさくさ紛れに生き延びた戦争犯罪人を日本人自らの手で裁き、断罪するところから始めることだ。もちろん、岸信介元首相も容疑者の一人である。

 

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