2013年6月8日土曜日

安倍首相が力説した「10年後、国民総所得一人当たり150万円増」のタラレバ詐術

 安倍晋三首相は5日、都内の講演で成長戦略第3弾を発表した。キーワードは「民間活力の爆発」だとか。具体的には「国家戦略特区の創設」や薬のインターネット販売の自由化、インフラ整備に民間資金を活用する社会資本整備(PFI)を導入することで10年後に国民総所得(GNI)一人当たり150万円増を目指すとしている。
「海外経済にも恵まれて、成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は最終的には年3パーセントを上回る伸びとなり、10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」
 壇上で安倍首相はこう力説した。
ぜひ、そうあって欲しいものだが、経済特区は過去何度も導入されたが成功した話は聞かないし、薬をインターネットで売ることがどうして国民総所得を押し上げることになるのかピンとこない。何より、国民総所得が増加したとしても個人の賃金・所得の増加を約束するものではないから過剰な期待は禁物である。
「日本経済再生」を掲げて誕生した安倍政権は「異次元の金融緩和」とこれに続く「大規模な財政出動」によって市場の期待を集めた。そして4月、「女性の活力」を経済成長の原動力とする医療福祉分野の成長戦略第1弾を、5月には農業所得倍増やインフラ輸出3倍増を目指すとした成長戦略第2弾を発表している。
これで「アベノミクス」3本の矢は出揃った。メニューは豪華だけれども、実現に至る“レシピ”がどうもはっきりしない。料理人の腕も怪しいものだ。しかも国民は三ツ星のフランス料理を求めているわけではない。
だからだろう。安倍首相が頼みとしている市場の反応も冷ややかだ。この日、日経平均株価の終値は前日比518円89銭安の1万3014円87銭で、今年3番目の下げ幅となった。外国為替市場はドルが売られ1ドル99円台まで円高が進んだ。
 このまま市場が冷え込むことはないだろうが、安倍首相はあれもこれもと欲張らずに優先順位を決め、国民が成長を実感できる政策を確実に詰めていくことだ。

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