2014年2月15日土曜日

JR北海道の度重なる不祥事は国鉄民営化の負の遺産

 昨年9月19日、JR北海道の函館線大沼駅構内で貨物列車脱線事故が起きて5ヵ月、その後次々と発覚する同社のずさんな安全管理体制に対して12日、北海道警がついに捜査のメスを入れた。
 直接の容疑は脱線事故直後に大沼保線管理室の社員2人(すでに懲戒解雇)と上部組織の函館保線所の社員(出勤停止30日)が責任逃れのためにレール幅の広がりを39ミリから25ミリにするなど複数のデータを改ざん。さらに国交省の特別保安監査が入る前日、函館保線管理室の助役(論旨解雇)ら計11人による動揺のデータ改ざんが発覚したことで、これ重くみた国交省と運輸安全委員会が10日、鉄道事業法(検査妨害など)と運輸安全員会設置法違反で刑事告発していたものだ。
 北海道警は本社や函館支社、函館保線所、函館保線管理室など五カ所を家宅捜索し、事件の全容解明を急ぐ。
「輸送の安全を第一とすべき鉄道行政として、国交省が厳正に対処した結果だ。1日も早く利用者の信頼を回復するためにJR北海道は全力を挙げて課題克服に取り組んでほしい」
 家宅捜索を受けて菅義偉官房長官は10日の記者会見でこう述べている。
確かに、悪質極まりない組織ぐるみの隠蔽工作ではあるが、これで事足りる話しでもないような気がする。
まるで被害者のように振る舞う国交省にこれまでJR北海道のずさんな安全管理体制を放置してきた責任はないのだろうか。あるいは事件の起きた背景を国鉄民営化にまで逆上れば、違った見方ができよう。
古い話になるが、たとえば民営化初年度の昭和62年、JR北海道の営業収益は919億円で経常利益はマイナス22億円だった。これに対してドル箱の東海道新幹線を握るJR東海は営業収益が8746億円で、経常利益は607億円だった。これに対してJR北海道が抱える路線の営業キロ数は3176キロで、社員数は1万2719人。JR東海は2003キロで社員数は2万1410人だった。しかも高速道路網の整備が進む中では収益増は見込むべくもない。JR北海道の経営最大の課題が今日に至るまで赤字路線の廃止と人員整理だったこと、つまりは民営化時に貨物を加えた民営7社に分割してJR北海道を孤立、無援に追いやってしまったことが、安全管理体制の不備を招いたことの背景にあるのだ。菅氏は当時、大物運輸族議員の故・小此木彦三郎運輸相の秘書だったから、ご承知のことだろう。
国鉄民営化から四半世紀以上が過ぎ、そろそろ民営会社の再編を考える時期だ。JR東海を名古屋で真っ二つにした東西2社体制が経営的にも乗客の利便性や安全性からしてもよりベターな選択肢だと考えるが、どうだろうか。

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