2014年7月6日日曜日

議論よりカウンセリングが必要な安倍首相


「抽象的、観念的な議論ではなく、現実に起こり得る事態で現行憲法のもとで何をなすべきかという議論だ」

 集団的自衛権の行使容認を閣議決定した1日夕、安倍首相は与党協議が合意に至った経緯について記者会見でこう述べた。

安倍首相はまた「海外で突然紛争が発生し、そこから逃げようとする日本人を米国が救助、輸送している時、日本近海で攻撃を受けるかもしれない」との具体例をあげ、集団的自衛権の行使に理解を求めた。

しかしながら安倍首相が言うような事態がはたして「現実に起こり得る」のかどうか。まずもって、何処とも知れぬ海外の地で何の予兆もなくある日突然、紛争が発生することを思い浮かべるだけでも、かなりの妄想力が問われよう。しかも、たまたまそこに居合わせた日本人を米国が救助し輸送中に日本近海で攻撃を受けるとなれば、これはもはや精神障害の域である。議論するよりカウンセリングが必要な安倍首相であろうか。

「外国を守るために戦争に巻き込まれるという誤解があるが、あり得ない。むしろ万全の備えが、日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持つ。それが抑止力だ。日本が戦争に巻き込まれる恐れはいっそうなくなっていく」

 安倍首相は記者会見でこうも述べている。多くの国民が集団的自衛権の行使容認に抱く懸念を否定したものだ。

 だが、どうだろう。閣議決定は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生した場合に自衛隊の武力行使を認めている。つまりは外国を守るために戦争に巻き込まれる恐れは十二分にあるわけで、けっして誤解ではない。

それにだ。いったいどこの国が日本に戦争を仕掛けてくるというのか。その恐れがあるというのであれば、それこそ現実に起こり得る事態として国民の前に具体的に明らかにするべきだろう。

 国民世論を巻き込み大騒ぎしたわりには、ことほど左様に現実感乏しく、抽象的で観念的な議論の末にたどりついた集団的自衛権の行使を容認する閣議決定であった。

 政府は今後、集団的自衛権の行使に関わる自衛隊法など関連法案の改正作業に入る。与党多数の国会では阻む手立てはない。どんな内容になろうとも、違憲訴訟のリスクがつきまとう悪法になることだけは間違いなさそうだ。

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