2014年10月9日木曜日

消費税率引上げで分かる安倍政権の政治力学


「デフレ脱却が困難で税収減につながり、財政再建にもマイナスになるようであれば考慮しなければならない」

安倍晋三首相は6日の衆院予算員会で消費税率の再引き上げ判断についてこう述べた。場合によっては引上げ先送りの可能性もあるかのような、かつてない踏み込んだ発言である。

 その上で安倍首相は「マクロ経済専門家による議論を早めにスタートし、7~9月期の国内総生産(GDP)の数値を見て年内に判断したい」との考えを示した。

 安倍首相にとっては当面、株価や円相場、国民世論の動向を見極めながらの悩ましい日々が続くことになりそうだ。

 とはいえ安倍首相の判断を待つ間にも政府与党内では引上げ容認派と慎重派

の駆け引きが続いており、成行き次第では政局混乱の引き金にもなりそうだ。

引上げ容認派は自民党では財政再建派筆頭の谷垣禎一幹事長や野田毅税調会長、国土強靭化の公共事業を推進する財政出動派の二階俊博総務会長らベテラン実力派議員が顔を揃え、これに連立相手の公明党が同調する。

今のところ与党内は引上げ容認派が大勢だが、ここにきて公然と引上げ先送りを求めているのが、規制緩和、構造改革派と呼ばれる菅義偉官房長官や甘利明経済財政担当相に近い中堅若手議員たちだ。1日にはその筆頭格の山本幸三衆院議員ら慎重派グループが勉強会を開催。「再増税はリスクが高い」として引上げを一年半先送りすべきだと主張する首相の経済ブレーンで内閣参与の本田悦郎氏を講師に招き気勢を上げている。政府内では逆に麻生太郎財務相と太田昭宏国交相の他、閣僚の大半を中立、慎重派が占めており容認派が劣勢である。冒頭の安倍発言はこうした慎重派の声に配慮してものだろう。

政高党低と言われてきた安倍政権だが、あるいは政権内の力関係を一変させてしまう消費税率の引き上げ判断である。

 

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