2015年2月17日火曜日

国際貢献とは真逆な安倍首相の積極平和外交

「今日の我が国の発展は先人たちが幾多の国難を乗り越えた礎の上にある。様々な環境の変化に適応しなければ、伝統を守りぬくこともできない。100年先を見据えた改革に果敢に取り組む」
 11日の憲法記念日を迎えるにあたり安倍晋三首相はこんな談話を発表した。
もちろん、念頭にあるのは憲法改正だが、これまでの安倍首相の言動を踏まえれば、とてもこの国の将来を見据えたものとは思えない。
政府が今国会成立を目指す安保法制がその最たるものだ。日本の自衛隊を中東湾岸諸国の紛争地域に送り出すことが何故「改革」と呼べるのか。日本が国際社会で果たすべき役割の中心に何故「自衛隊」を据えなければならないのか。そのことがどんな日本の「伝統」を守り、日本の発展を保障することになるのか。突き詰めれば、問われているのは安倍首相が掲げる「積極平和外交」の是非なのである。
戦後日本の外交は日米同盟を基軸にした東アジアの安全保障の枠組みと、国際貢献においては国連中心主義の平和外交を推進してきた。ところが安倍首相はこれに満足せず、「様々な環境の変化」を理由に紛争地域での自衛隊の積極運用を打ち出し、日米同盟の役割を地球規模にまで拡大しようと目論む。さらに平和外交においても、10日に閣議決定した「開発協力大綱」では日本の政府開発援助の支援対象を外国軍の活動にまで拡大することを明記している。先に安倍首相が中東歴訪で約束した「イスラム国」対策の約2億ドル支援は、まさにこうした野心を先取りしたもの。
安倍首相は「人道支援」であることを強調しているが、名目はともかく支援の内訳をみれば、その約9割が「イスラム国」周辺諸国への直接支援である。
日本政府はこの地域に過去3回にわたり計1300万ドルを支援してきたが、そのほとんどは国連機関や赤十字を通じたものだった。それが今回、突出した支援額もさることながら、当事国への直接支援に切り替えたのは国連中心主義を掲げてきた戦後日本の「伝統」的平和外交とは大きく異なるアプローチだった。しかも、それが結果として日本の「イスラム国」リスクを高めてしまったとすれば、いったい何のための2億ドルの支援であったのか。安倍首相は12日、衆参両院で施政方針演説を行う。積極平和外交の徹底検証が求められるところだ。

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