2015年3月16日月曜日

安倍首相の祖父、岸信介と自民結党60年


 今年、日本は敗戦から70年。自民党にとっては結党60年の節目の年である。8日に行われた自民党大会では平成27年度運動方針に、その結党以来の悲願とも言える憲法改正について「改めて胸に刻まねばならないのは、憲法改正を党是として出発した保守政党としての矜持だ」として「現行憲法の主権在民、基本的人権、平和主義の3つの基本原理を継承した改正原案の検討、作成を目指す」と明記した。今後、自民党は憲法改正賛同者の拡大運動を推進するそうだ。

原案の中身も定まっていないのに賛同するもしないもない。しかも、そもそも憲法は国家の在り方を定める基本原則を示したもので、その基本原則を継承するというのならいったい何のための改正であろう。

一方で昨年7月、安倍内閣は憲法の基本原理を継承するどころか、これを勝手に捻じ曲げ集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈を閣議決定している。今国会の成立を目指す安保法制はこの閣議決定を前提にしたもの。そうであれば憲法の条文は閣議決定でいかようにでも解釈できることになる。少なくとも安倍内閣はそうしてきた。

「戦争に巻き込まれるとか、徴兵制が始まるとかいう無責任な批判がある。無責任な批判にたじろぐことなく、やるべきことは毅然とやり遂げる。国際協調主義の下、積極的平和主義の旗を高く掲げ、日本の領土、領空、領海を断固として守り抜く」

安倍首相はこの日、党大会の演説でこう述べ、安保法制の整備に向けて尋常ならざる意欲を示した。

政権発足時には「国民の声に謙虚に耳を傾ける」と語っていた安倍首相が、その同じ国民の声を「無責任な批判」とは恐るべき変貌である。

さらに先の運動方針に盛り込まれた憲法改正原案の3つの基本原理と安倍演説を重ね合わせてみれば、つまるところ現行憲法の「平和主義」を「積極平和主義」に置き換えて戦力不所持の条文を取っ払い、自衛隊を“普通”の軍隊にしたいだけの安倍自民党の憲法改正の狙い浮かび上がってこよう。

 保守合同の立役者であり自民党結党時、党綱領の作成に深く関わった第3代自民党総裁の岸信介元首相は当時、後援会誌に次のような一文を寄せている。

「憲法改正と再軍備の観念のみを以て我が党の全貌を律するのは当たらない。現実の政策として鋭意その立案と実施に務めんとするものは、中小企業、農漁業、勤労対策であり、雇用拡大、国土開発、海外市場獲得の具体策である。且つ予算面において特に重点を置かんとするものは、社会保障政策の実施である」

 要するに観念を振り回すな、ということであろう。内閣府が9日発表した14年10~12月期国内総生産(GDP)の改定値を名目で前期比1・0%増(速報値の1・1%)。年率に換算すると3・9%となり、速報値から0・6%下方修正となった。岸元首相の言葉に従えば、政治の最優先課題は安保法制の整備ではないのだが。

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