2015年6月21日日曜日

安保法案は違憲リスクの極小化で与野党の歩み寄りを

国会は日ごと混乱の度合いを強める安保法制審議が10日に再開される。8日に行われた衆院平和安全法制特別委員会の理事懇談会で決まった。野党側は先の衆院憲法調査会で安倍内閣が昨年7月1日に閣議決定した集団的自衛権の行使容認について憲法学者3人全員が違憲との見方を示したことを受けて政府の見解を求めた文書を提出するよう求め、与党がこれに応じることで歩み寄った。
 戦後日本の安全保障の大転換を促す重要法案だけに一分のスキがあってはならないが、是非はともかく、政府与党は自ら選んだ憲法学者に違憲と言われては立つ瀬がなかろう。
 おまけに保守系大衆紙の読売新聞が行った世論調査では法案の説明不足を指摘する声が80パーセントに上り、法案審議前の前回とほぼ同水準に止まっている。今国会での成立については59パーセントが反対しており、こちらは11ポイントも上昇している。
 しかも、安倍内閣の支持率は5ポイント下がって53パーセント。リベラル系 のメディアであれば、40パーセント切る数字である。 
    焦る自民党は谷垣禎一幹事長が7日の街頭演説で「最高裁判所は、憲法の最低限必要な自衛権を行使できる、と言っており、集団的自衛権を否定していない。法案を“戦争法案”などと言ってデマを流す人がいる。日本が平和国家であることは今後も微動だにしない」と熱弁をふるった。
「平和の党」を標ぼうする公明党では、戦争法案のお先棒を担ぐ北川一雄幹事長が「法案は憲法9条を超えたものではない」と説明。山口那津男代表は「政府は審議で丁寧な答弁に努めてもらい」と述べ、国民世論の動向に神経をとがらせる。執行部としてはとりわけ、憲法9条に敏感な支援組織の創価学会婦人部の意向が気になるところだろう。
 勢いづく民主党は枝野幸男幹事長が7日、今後の国会審議について「最高裁の判決の枠を超えていると、憲法を長年研究してきた専門家の皆さんが言っている。少なくとも早期の成立は相当無理な状況になりつつある。聞かれたことに答えられないなら、もう一度法案を出し直せという段階にきている」と記者団を前に早くも勝利宣言である。
 とはいえ、このまま集団的自衛権の行使容認をめぐり堂々巡りの神格論争に
陥れば法案審議は前に進まない。
政府としては今さら集団的自衛権の行使容認の御旗を下すわけにもいくまいが、憲法論争の余地を挟まず、かつ国民世論の合意形成も比較的容易な日本周辺事態にポイントを絞り込むことで野党との修正協議を急ぐことだ。
 少なくとも眼前に迫る中国の海洋進出と朝鮮半島有事への備えが急務であることは与野党に共通した問題意識ではなかろうか。どこかに着地点を見出すのが政治家の知恵であり、責任でもある。

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