2015年6月21日日曜日

安倍首相との会談で橋下大阪市長が打ち込んだもう一つの楔

国会は24日に会期末を迎える。安保法制をめぐる与野党の駆け引きがいよいよ激しさを増す中、会期延長は既定路線とはいえ、出口戦略では与野党共に足並みの乱れが生じている。
 震源地は維新の党の最高顧問を務める橋下徹大阪市長である。
橋下氏は14日、都内のホテルで安倍晋三首相と会談した際、安保関連法案の成立に理解を示し、会談直後には自身のツイッター上で「民主党という政党は日本の国にとってよくない。維新の党は民主党とは一線を画するべきだ。なぜなら政党の方向性が全く見えない。空理空論の夢物語だけでは行政運営はできない」などと民主党を痛烈に批判。橋下氏は安倍首相との会談に先立ち、維新の党の松野頼久代表、柿沢未途幹事長と会談、同様の考えを伝えている。
橋下氏は周知のとおり、「大阪都構想」の住民投票に敗れ、政界引退を表明したものの、党内に橋下グループを擁しており、その言動は無視できない。その数を背景に野党共闘、民維合流に傾斜する執行部の喉元に「党分裂」の匕首を突きつけたのである。
安保関連法案の扱いについて維新の党はすでに先週12日、今井雅人政調会長が記者会見で対案提出を表明しており、政府与党との修正協議に前向きな姿勢を見せている。
「いろんなことはあっても、広い気持ちで協力関係を築ける努力をする。その度量と力が民主党に求められている」
 民主党の岡田克也代表は同じ日、前橋市の講演でこう述べ、安保関連法案の成立阻止に向け、維新の党と共闘していく考えを示した。
 しかしながら維新の党は先週、橋下グループが主導して労働者派遣法の改正案をめぐり廃案を掲げる民主党の頭越しに政府与党との修正協議に応じている。加えて今回の橋下氏と安倍首相との会談である。両党の亀裂が修復困難なことは誰の目にも明らかだ。あるいは維新の党の現執行部が民主党との関係修復に動けば、橋下グループの離反を招くことになろう。安倍首相にとっては願ってもない展開である。
もっとも自民党内はこうした橋下氏の動きに対して、谷垣禎一幹事長は15日の記者会見で
「中身にもよるだろうが、自民、公明両党であれだけ詰めたものなので、なかなか修正といっても簡単な話ではない」
 と述べ、安保関連法案をめぐる維新との修正協議について不快の念を露わにしいる。
 安倍、橋下会談は菅義偉官房長官と松井大阪府知事が同席しており、与党の頭越しに安保関連法案への対応が話し合われたとなれば、首相官邸が政権を支える与党の存在を蔑ろにしたに等しく、野党だけでなく、政府与党内にしこりを残す結果となった。あるいは無風とみられた秋の自民党総裁選にも波風が立とう。きな臭さ漂う国会最終盤の攻防である。

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