2015年7月2日木曜日

60日ルール封印でいよいよ現実味を帯びる安倍退陣

自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久幹事長ら与党幹部は24日、安保関連法案の成立に向けた協議で、会期の大幅延長によって可能となる衆院の再可決を行わないことを確認した。
 周知のとおり、国会会期を95日間延長したことで同法案は国会日程上、7月29日までに衆院を通過すれば、参院の採決がなくても60日後に自然成立する。しかし、それでは参院軽視の批判は招きかねない。野党だけではなく参院全体を敵に回すことを怖れて早々、憲法が定める「60日ルール」の再可決を封印した、というのが大手マスコミのもっともらしい解説である。
 もちろんそれも理由の一つだが、だったら何のために国会会期を9月末まで引っ張る必要があるのか。前回、本欄で触れたが自民党総裁選に絡めて考えれば、「60日ルール」を封印したことに別の意図が透けて見えよう。
 安倍晋三首相の党総裁任期は9月30日まで。党則では任期満了10日以内の国会議員による投票で新総裁が選出される。つまり、党員投票による本選挙を行わないことが前提の総裁選なのである。
「出馬の意向がある人がいれば今年初めあたりから活動している。現在、誰からもそうした話は聞かない。総裁選にカッと血を上らせず、今は静かに重要案件に専念することが大事だ」
自民党の二階俊博総務会長は23日の記者会見でこう述べた。額面通りに受け取れば、安倍首相の無投票再選を支持したものだが、ここまでなら素人考え。
現時点で名乗りを上げる対抗馬がいないことは事実だが、だからといって安倍首相が無投票で再選されるとは限らない。
言うまでもなく安倍首相が無投票で再選されるためには安保関連法案の成立が絶対条件となるが、「60日ルール」の再可決ができなければ、維新の党との修正合意を目指すか、最悪でも参院で野党の保守系議員を一部取り込み、成立を期すことになる。いずれにせよ、綱渡り的な政権運営が強いられよう。
あるいは打つ手をなくした安倍首相が退陣と引き換えにした「60日ルール」の適用を与党執行部に求めてくることは十分あり得る。退陣とまではいかなくとも、政権運営の主導権を陰の幹事長とも呼ばれる二階総務会長ら党執行部のベテラン議員に握られることだけは確かだ。
折しも今週発売の週刊ポストが「ポスト安倍」の特集記事を組んでいる。今国会会期末の安倍退陣を前提にしたものだが、この中で筆者は有力後継候補に谷垣幹事長の名を挙げた。
 理由は同誌を読まれたい。自民、公明両党の執行部には安倍首相の暴走を懸念、安保外交政策の軌道修正を図りたいとの空気が漂う。「60日ルール」の封印はその一手とみた。


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