2015年8月13日木曜日

礒崎補佐官の参考人招致で鴻池委員長が見せた参院の矜持

  衆院平和安全法制特別委員会は3日、安保関連法案をめぐり「法的安定性は関係ない」と発言した安倍晋三首相の側近、礒崎陽輔国家安全保障首相補佐官を参考人招致した。
 この中で磯崎氏は「大きな誤解を与えてしまい、大変申し訳ない。発言を取り消し、心よりお詫び申し上げる」と謝罪。民主党の福山哲郎議員が「ちゃぶ台をひっくり返した(これまでの政府答弁を否定)に等しく自ら辞めるべきだ」と辞任を迫ったものの、「首相補佐官の職務に精励していく」と開き直るのである。
 礒崎氏の問題発言は26日、地元大分の講演会で飛び出したものだが、誤解を与えたと謝罪して住む話ではない。
 福山氏は過去の礒崎発言を取り上げ、「安倍首相はイラク、湾岸に行かないと言ってきたが、あなたは国際情勢の変化によって最小限度の武力行使も変化する。万が一の場合は上陸して戦わなければならないと言っている」と重ねて追及したが、わずか15分ほどの参考人質疑は不完全燃焼に終わってしまった。
 もっとも与党が難色を示す中、鴻池祥肇委員長が職権で参考人招致を決めたことは評価に値しよう。参考人質疑の冒頭、自ら発言を求めた鴻池氏は磯崎氏が同じ地元大分の講演会で「9月中旬には法案をあげたい」と発言したことを取り上げ、「2院制の価値を承知しておらず、極めて不適切だ」と述べて厳しく叱責。その上で「戦前、貴族院が軍部の暴走を止められなかった反省から今日の参院はある。衆院の拙速を戒め、足らざるを補い、合意形成に近づけることが参院のあるべき姿だ。衆院の下請けでも、ましてや官邸の下請けではない」と述べた。
 鴻池氏は周知のとおり、自民党内きってのタカ派、強面政治家だが、この発言は政治信条、党派を超えた議会人としの矜持を示すものであり、戦後保守政治の王道を諭したものだ。
 9月、自民党総裁選の前に法案を成立させ、再選を確実にしたい安倍首相とその取り巻き連中には耳の痛い話であろう。
 事は日本の安全保障の根幹にかかわる重要法案の国会審議である。これを政局の道具に使うのは保守政治においては邪道、餓鬼道以外の何ものでもない。幸いにして国会の会期は9月27日まで。審議時間は十分あるのだから鴻池氏の言葉通り、合意形成に向けてギリギリまで話し合えばいいのである。安倍首相の再選なんか知ったことかの参院であればこその「良識の府」ではなかろうか。


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