2015年8月22日土曜日

嫌々ながらの安倍の70年談話

 国会は12日からお盆休みに入った。安倍晋三首相はこの日午後、地元山口県に飛び、父・晋太郎元外相の墓参りをしたが、14日には帰京して世界が注目する中、戦後70年談話を発表する。
 談話の内容については、焦点となっていた日本の敗戦に至るアジア諸国に対する侵略戦争と植民地支配を歴史的事実として認め、反省や謝罪の文言を盛り込むようだ。だからといって大騒ぎすることも、安倍首相をとりたてて評価することないし、盛り込まない理由はない。
 そもそも70年談話がこれほど注目を集めるのは、安倍首相が政権発足以来、一貫して戦後レジュームからの脱却を訴え、日本がポツダム宣言を受け入れ日本軍部が暴走した侵略戦争や植民地支配の暗黒の歴史を否定してきたからだ。
 その歪んだ歴史観の上に安倍首相は反省や謝罪を盛り込んだ戦後50年の村山談話とこれを踏襲した60年の小泉談話に否定的な発言を繰り返してきたのが今日、かつてないほどの中韓両国との関係悪化を招いたのである。
 ところがここにきて、集団的自衛権の憲法解釈を勝手に捻じ曲げ国会に提出した安保関連法案が国民世論から批判の集中砲火を浴びてしまった。内閣支持率は30%台に急落、不支持率が60%に迫るに至り、さすがに「ヤバい」と思ったのか。
 公明党の山口那津男代表もしかり。戦後同党が掲げてきた「護憲平和」の旗印をいとも簡単に捨て去り安倍首相と二人三脚、戦争法案の成立に手を貸す山口代表をはじめとする党執行部に対しては公明党の志ある議員や支援組織の創価学会内部からの突き上げが日増しに強まってきた。このまま安倍首相の狂気に付き合っていたのでは代表の座を追われることになるやもと危機感募らせた山口代表は先週7日、安倍首相と会談した際、「歴代内閣の談話を継承することが国民や国際社会に伝わるようにして頂きたい」と申し入れた。
ここで「ブレーキ役」としての存在感をアピールしておけば、少しは支援組織の創価学会への言い訳にもなろうかとの邪な心が透けて見えよう。
安倍首相にしても、山口代表の申し入れを袖にすれば、今後の安保法案審議で公明党の離反を招くことにもなりかねない。今国会、万が一にも安保関連法案が不成立となれば、9月自民党総裁選での再選戦略にも赤信号が点滅する。
つまり「70年談話」でたとえ「お詫び」の言葉が盛り込まれていたとしても、アジアの人々への「心からのお詫び」に非ず、この2人の自己保身の為せるところだ。そうでなければ、もっと早くに中韓両国の声に謙虚に耳を傾け、友好親善に注力したはず。
おそらく安倍首相は戦後70年の談話を会社の上司や学校の先生に差し出す形ばかりの「始末書」程度にしか考えていないのであろう。どうしようもなく言葉の軽い日本国の首相である。


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