2015年8月13日木曜日

追悼 ミスター財務省・香川俊介前事務次官の早すぎる死

前財務事務次官の香川俊介氏(58)が9日夕、亡くなられた。昨年秋、安倍晋三首相が消費税率再引き上げの見送りを決断した際、杖をつき、足を引きずりながら首相官邸に出向いて財政再建の道筋を解き、最後まで説得を試みたが叶わず。増税を強いる財務省のトップとしてマスコミ世論の批判を一身に浴びたが、すでにこの時、香川氏の肉体は取り返しがつかないほど癌細胞に蝕まれていた。
取材者として長く親しくお付き合いをさせていただいたが、直後に食事をご一緒させていただいたが、さすがに精根尽き果てた様子だった。
 「首相は再引き上げに傾いていましたが、菅(官房長官)さんにダメ出しされてしまった。政治判断だから仕方ないけど、困るのは国民。いずれ分かると思いますが」
帰り際に漏らしたこの一言に財政再建にすべてをかけた財務官僚の矜持と達観を垣間見るのである。
野田民主党政権時代の「社会保障と税の一体改革」をめぐる3党合意はこの人なくして成し得なかったであろうことは誰もが認めるところだ。その偉ぶらない、気さくな人柄に政官財、マスコミの立場を越えて香川ファンは多く、まさにミスター財務省と呼ぶにふさわしい傑出した官僚であった。思い出は尽きないが、6月中旬、次官退任の新聞辞令が掲載された翌日に頂いたメールには「あと3週間で役所を辞めます。ガンの方との闘いは続きます。体調はまあまです」とあった。次官在任期間は1年。ご冥福をお祈りする。
 折しも政府の経済財政諮問会議は10日、財政健全化に向けた歳出削減の評価指標や工程表を作る専門調査会「経済財政一体改革推進委員会」の初会合を開いている。
席上、甘利明経済財政担当相は「今年度末までに工程表を作り、来年度予算から改革が根付くよう指導、助言をお願いしたい」と述べた。
周知のとおり、安倍内閣は発足当初から経済再生戦略を前面に押し出し、これまで三度にわたる予算編成は経済成長による税収増を当て込んだ史上空前の歳出規模となった。確かにアベノミクスが引き起こした金融バブルは一時的に国庫を潤したかもしれないが、景気の先行きは楽観を許さない。安保安保の安倍内閣に何を今さらの財政再建である。


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